ちょっと逡巡しましたが、やはり触れておく必要がある気がしたので記事にしておきます。
画像は(C)SEGA PhantasyStarOnline2 ゲーム画面のスクリーンショット。
ターンヘッドというタリスを持ったマイキャラです。所持していないアイテムなのでマイショップで試着したものを撮影しました。
実はこのターンヘッドというタリスとほぼ同じコンセプトのアイテムを、アイテムデザインコンテストに作品として応募したことがあります。丁度この記事の前回の記事がその件に関するもの。やはり内部構造の見える時計で、歯車を抜き取って投げるタリスであるというところまでは同じです。アイデア的な違いは蒸気を吐くという要素。
前回の記事はこちら↓
PSO2アイテムデザインコンテスト 反省会
わざわざ前回の記事を参照していただくのも何ですから、ここにも画像を再掲しておきます。
↓(クリックで拡大)
もちろんアイデアだけ盗用された!なんていうつもりはありません。こんな状況でそんな抗議をしても失笑を買うだけでしょう。
似たような経験は初めてのことでもないので、ちょっと事態を俯瞰で見ながらこうしたデザインコンテストの中に潜む問題点について考えてみようと思います。
デザインコンテストはPSO2に限らず様々なタイトルで行われていますが、この手のコンテストでは普遍的な問題として、今回のようなケースが起こる宿命を自ずから抱えています。
例えば予め実装予定だったアイテムと、コンセプトが似通ったアイテムをユーザーから応募されてしまった場合。
メーカー側にはその応募作品を元に翻案したのではなく、元々コンセプトとして存在したことを証明する方法がありません。応募したユーザーは後日似通ったアイテムの実装を見て微妙な気分、まさに今の私のような気分に陥るわけですが、これはコンテストを開催する以上避けられない弊害です。
逆に応募作品を元に翻案して、実際にアイデアを流用した場合。
しかしそもそも、アイデアの収集を目的のひとつとしてコンテストを開催するという側面を全否定することはできません。
こうしたコンテストは規模が大きいほど、その応募作品群はアイデアの宝庫、玉石混淆の宝の山です。
使えるアイデアを拾い出し、少人数の発想では枯渇しがちなネタの素にしたとしてもそれを一概に悪いこととは言えないでしょう。
もしそこを否定するなら、応募“されてしまった”アイデアが全て使えなくなるというジレンマに陥ってしまいます。
また、特定のオンラインゲームにおけるなんらかのアイデアが公開される時、その権利は初めて公開した人が全て得るべきものとも言えません。
現実でのアイデアは最初に実現したものに特許が与えられますが、オンラインゲームは世界やその仕組み自体が創造されたものであり、その創造された世界でしか成立しないアイデアは創造したメーカー、クリエイターの権利も含んでいなければなりません。
分かりにくいので例を考えてみます。
例えばPSO2で武器の新カテゴリは?と考えると、容易にキックを主体とする武器を発想することができます。これを一人のユーザーが想像図等に詳細にまとめて公開したとしても、最初に公開したことを理由にそのユーザーがアイデアの諸権利を得ることにはなりません。
キックの武器カテゴリは無意識か意図的かに関わらず開発元がゲームを創造した故に成立しているアイデアであり、ユーザーはその存在に気付き、逸早く公開しただけに過ぎないのです。
発想が可能であるアイデアの権利は、その時系列に関わらず世界を創り上げている運営者、この場合はセガが留保するべきものでしょう。
今回で言うなら、応募作品のアイデアを見てその存在に気付いたとしても、元々その権利はメーカー側のものだということになります。
コンテストの賞品は、アイデアを探し当てたユーザーに対してメーカーが用意している報酬に過ぎません。
とはいえそれらは開催する側の視点で考えた場合。
ユーザー側の視点から考えた場合、論点は心情的なものが主になってきます。
もしもメーカーがアイデアの収集を主な目的としてデザインコンテストを開催するとしたら、それは眠っているアイデアを探し出すのにユーザーを利用している、という謗りを受けても強ち間違っていない、確信犯ともいえる手法といえなくもありません。
今回PSO2のアイテムデザインコンテストでは、結果発表まで応募作品を秘匿するよう参加者に要請がありました。理由は他にもあると思いますが、応募作品全てが公開される方式では権利問題が表面化するというしっかりした認識があったんじゃないでしょうか。
少なくとも応募するユーザーは応募するアイデアを自分のものと認識しています。そう勘違いしている、と言い換えた方がいいでしょうか。
応募されたアイデアの権利が全て運営者、この場合セガに完全に帰属するとしたら、例えそれが法的、常識的根拠に正しく基づいていたとしても応募者の全てが納得することはあり得ません。
やはり応募した側としては、アイデアだけ流用された“様に見える”結果が面白いはずもないのです。
それが事実流用されたものであるかどうかはまた別の議論です。
応募者の一人として運営者に対する要望を述べることができるとするならば、こうしたコンテストでは可能な限り多くの作品を実装し、前後関係は別として結果的にアイデアのみを翻案した“様に見える”事案を少しでも減らして欲しいと願います。
PSO2ほどの規模で行われるコンテストでは、今回の当選作品数は少ないといっていいんじゃないでしょうか。
もちろん、コストのかかる要素であることは知っているつもりですがそれを考慮してもです。
権利がユーザーのものではないとしても、探し当てた報酬は可能な限り支払われるべきでしょう。
応募されたアイデアは誰のものか。
結論から言えばメーカー側の理論が正しいわけですが、やはりオンラインゲームもサービス業。応募してくるユーザーの心情もケアできなければ、成功したとは言えません。他でもないユーザー側が熱望してコンテストが開催されるという側面すらあるわけですから、どうにも難しいんですが。
最後になりましたが、とりあえず前回の記事を後年見た人が「それターンヘッドじゃん」なんていう勘違いを防ぐために、ターンヘッド実装より前に前回の記事があったという前後関係は主張しておきたいと思います。このアイデアが誰のものかは関係なく、応募した時点で1ユーザーがターンヘッドの存在を、或いは似通ったコンセプトの他作品の存在を知る方法はなかったのです。またその時点でターンヘッドのコンセプトが存在したかどうかも、恐らく今後永久に1ユーザーが知ることはできないでしょう。
オンラインゲームにおけるデザインコンテストとはそういうものであり、そして次回があれば懲りずにまた応募するのです。