しかし完全に分けることもあれば、いくつかの要素が混在するレイヤーを作ってみたりとその手順はさっぱり安定しませんでした。どうやってもなんとなく思い通りに発色しないのです。
最近になってようやく要点が分かってきたような気がするので、一部まとめてみます。
ちょっと長くなりますがお暇な方はどうぞお付き合いを。
実際には各パーツや要素に分かれているのでもっと複雑ですが、分かりやすい形にまとめました。
サーフェイサーを吹いたフィギュアみたいですネ。
作業中も模型を作るような楽しさがあったりします。
こちらは彩色レイヤー群をまとめたもの。
上図同様実際には各パーツに分かれているのでもっと複雑です。
マーキングなど色数の多いもの以外は、殆どが単色レイヤーで構成されています。
これらをオーバーレイで合成するのが最近「グリザイユ技法」なんて呼ばれているものらしいんですが、やってみると思ったような結果が得られません。
なんとなく彩度が低い様な・・・くすんでいるような・・・そんな絵になったりしませんか?
もちろんそれを味として求めているなら全く別のお話です。
上図の二枚を CLIP STUDIO PAINT 上でもう一度合成してみました。
恐らく SAI や Photoshop でも同じ結果は得られるでしょう。
彩色レイヤーの上にグレースケールの陰影をオーバーレイで置いたもの。
発色はいいものの、コントラストが抑えられてメリハリのない結果になります。
特に暗い色の部分、この図ではこげ茶色のパーツを明るくすることが難しく、強い光は表現できません。
こちらは逆にグレースケールの陰影の上から彩色レイヤーをオーバーレイでかけたもの。
コントラストこそきちんと出るものの、微妙にくすんだような色合いになります。
CLIP PAINT Lab で試しに描いた絵でこの方法を採ってみましたが、やはりどこか日本画のような、彩度の低い絵になっちゃいます。
これが今回実際に行った合成に近い方法で重ね合わせたもの。
上図のオーバーレイに比べて、コントラストも彩度もしっかり出すことができます。
この画像、実は2枚だけ合成したものではありませんが、比較しやすいようにひとまずここに並べてみました。
オーバーレイの計算式を見るとなんとなく原因がわかりますが、面倒なお話なので詳細は割愛します。
原理は取り敢えずおいとくとして、オーバーレイで重ねたのでは陰影に必要な明度の変化が表現しきれないということじゃないでしょうか。
もうひとつオーバーレイで陰影を重ねると、「暗い色ほど鮮やかに見える」という特徴があります。
光が多くなると人間の目で得られる色の情報も多くなるはずですから、ある程度までは明るくなるほど鮮やかに見える方が自然。物理現象とは逆になるので違和感にもなりかねません。
そんなわけで、こんなレイヤーを用意してみました。
備長炭みたいな黒に見えるこの画像は、先に掲載したグレースケールの画像から50%より明るい部分を抜き出し、レベル補正したものです。
実はこちらが本来の画像で、前出の方がこれを元に合成したものですが理論的に分かりやすい説明にさせてください。
この画像は、陰影レイヤーが彩色レイヤーを明るくする部分のみを抜き出したものといえます。
彩色レイヤーの上に「加算(発光)」で合成します。
「加算(発光)」は光が当たることによって起こる表面色の変化を最も自然に表現してくれるブレンドモードです。
こちらは逆に、彩色レイヤーを暗くする部分のみ抜き出してレベル補正したものです。概念としてはプラモデルなどで行う墨入れに近いもので、要所を黒でしめる効果があります。
厳密には意味が違いますが、私はレイヤー名を「ラジオシティ」としています。
ラジオシティの考え方では、オーバーレイとは逆に暗いほど彩度は下がります。
彩色レイヤーの上に「乗算」で合成することで、その現象を再現します。
奇妙な方法に見えるかもしれませんが、この手順はコンピュータグラフィックスで培われた理論に基づく正攻法といっていいものです。
こうして分解することで明度と彩度の関係を整理し、オーバーレイ合成では得られない色を出すことを可能とします。
コンピュータグラフィクスと言ってもイラストの場合は手で描くわけですから、固有色に関係なく直感的に明るさを加減できるという点が最も重要でしょう。
グレースケールにオーバーレイで色をかけたのでは思った表現にならないと感じてらっしゃる方は、メンドクサイかもしれませんが一度試してみてください。
まずは50%のグレーで外形を塗りつぶし、明るいところと暗いところを別レイヤーで描き込んでいくだけです。そういう意味ではグリザイユというよりキアロスクーロなのかもしれませんネ。
基本は明るい方が「加算(発光)」、暗い方が「乗算」です。
その他の表現もありますがそれはまたの機会に。
コンピュータ上で行うグリザイユ技法は、現実の画材を使うグリザイユ技法とは似て非なるものです。
理論を基に物理法則をなぞる生真面目な写実への道なのかもしれません。
そもそもこんなのグリザイユ技法とは言わない?(゚ー゚;)